障害者職業総合センター
 
 

調査研究報告書NO.3

職業的困難度からみた障害者問題 -障害者および重度障害者の範囲の見直しをめぐって-

執筆担当者

伊達木せい 障害者職業総合センター 特性研究担当 統括研究員
池田 勗 障害者職業総合センター 評価相談研究部門 統括研究員

序章 研究の目的及び方法

(研究の目的)
  今日、障害者に対する政策的対応や支援は、身体障害者手帳の障害等級や療育手帳の知能レベルなどをもとに行なわれている。しかし現行の障害等級・範囲と、現実に障害のある人々が遭遇している職業的困難の度合いとの間には、かなりの乖離のあるケースがみられ、障害の等級では中・軽度に区分されているが職業的には重度に相当する者、現行の障害者の定義には含まれないが、大きな困難に直面している者などが少なからぬ数にのぼっている。これは、たとえば身体障害者手帳の障害等級では、障害の判定が機能・形態障害を中心としたものとなっていて、切断のように明らかに欠損のわかる者の等級は重くつけられるのに対し、能力障害は日常生活能力を中心とした評価にとどまっていることから、巧緻性、正確性、速さ(能率)といった職業上の能力としては非常に重要な能力に障害があっても等級は軽いものになっていること、高次脳機能障害(脳損傷)・社会適応障害・知的ボーダー層・軽度多重障害・病弱・社会的ハンディキャップなど、従来の定義にはいりきらない障害者が増えてきていることによる。
  現行の障害等級が年活上の不便という視点からみても、必ずしも合理的とは言えない諸側面を有しているとの指摘がなされているが、身体障害者等級表そのものの見直しは本論文で論じ得る範囲を越え、また所管(厚生省)の任にもない。
  日々の障害者雇用行政を進める立場からは、基本的には現行障害等級に依拠するとして、障害者の雇用を促進する上で直面する明らかな不合理については、可能なかぎりこれを修正、軽減し、職業上の困難に直面している何らかの障害のある人々が、より適切な支援の対象とされ、効果的な職業リハビリテーションが実現されるよう、こうした人々を雇用に関して、“職業上の障害者”あるいは“職業上の重度障害者”として柔軟に対処し得る余地を確保しておくことが必要と考えられる。
  本研究の目的は、まず、①就職や職業の継続の面で大きな困難に直面している職業上の困難度の高い障害者とはどのような障害者であるのか、できる限り広く情報を収集し、事実を明らかにすること、また、②これらの障害者の職業的な困難を増幅している要因が何なのか、困難を軽減する方法の有無も含めて明らかにすること、これらを通して③職業上の重度障害者、又は現行の障害者の定義外にあるが職業上の障害者として支援することが求められる者を把握するとともに、④職業上の重度あるいは職業上の障害者を判定する方法や基準を設定する可能性をさぐることである。
  今回の報告では①②および③の結果を中心にまとめ、④についてはその方向の示唆を得るところまでを行った。
(研究の方法)
  主として障害者職業センターカウンセラーへのヒアリング(1993年3~5月、ほぼ各障害者職業センター1名、比較的経験の長いカウンセラー51人に、1人平均10~15分程度電話照会したほか、カウンセラー出身の研究者や管理者にもインタビューした)、及び「身体障害者就業難易度調査」(1992年8月)の結果による。
(結果の整理)
  第1章から第4章は主として障害者職業カウンセラーからのヒアリングをもとにまとめた。60人近いカウンセラーから提示された、それぞれの障害をめぐる問題点や悩み、解決への提言を、できるだけそのまゝ、また可能なかぎり全文収録しており、今日障害者が直面している困難の多くが具体的に示されている。
  また、第5章から第7章は「身体障害者就業難易度調査」の分析結果を中心にとりまとめた。主として障害の種類・等級と職業的困難度との関係、および両者の乖離の問題、職業的困難度を評価する方法について論じている。
  なお、文中に用いられている“障害者の定義に含まれる者(含まれない者)”とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」にもとづく法的助成制度等の対象となっている者(対象となっていない者)を意味する。

目 次

序 章 研究の目的及び方法

第1章 職業的困難度の高い障害者

第2章 職業的困難を経験している理由および必要な配慮等

第3章 職業障害程度別の援護の必要性と、判定基準設定の可能性について

第4章 障害者への認定、もしくは重度傷害者への認定が雇用促進上持つ効果について

第5章 「身体障害者就業難易度調査」にみる障害の種類別・等級別就業難易度

第6章 身体障害者等級が中・軽度にかかわらず、職業困難度の高い者の内訳

第7章 ERCD(職業チェックリスト)による職業的困難度判定の妥当性と問題点

第8章 まとめと今後の課題

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