障害者職業総合センター
 
 

調査研究報告書NO.54

精神障害者の雇用管理と就業支援

執筆担当者(執筆順)

松為 信雄 障害者職業総合センター 主任研究員
堀 宏隆 障害者職業総合センター 研究員
加賀 信寛 国立職業リハビリテーションセンター:前障害者職業総合センター
上田 光 大阪障害者職業センター:前障害者職業総合センター

(目的・方法)

 精神障害者の対策では、医療・保健・福祉・雇用の諸問題について多面的な施策が展開されつつある。本研究では、そうした実情を踏まえながら、特に、以下の点に焦点を当てて検討することとした。

 第1は、企業内での雇用管理に関するノウハウをまとめることである。これまでも、企業内での種々の雇用管理に関するノウハウを蓄積し、それを冊子にして事業主等に周知させる努力が払われてきた。だが、障害の有無に関わらない一般的な雇用管理の範疇に即して、既存の情報を整理する。それによって、精神障害の人の雇用管理に関する特徴や傾向あるいはノウハウを、事業主や人事労務担当者の既存の雇用管理に関わる知識や方法に組み込みながら、その特徴を明らかにする。

 第2は、精神障害の人の多様な働きかたについての知見と可能性を明らかにすることである。所定の労働時間に見合うだけの作業遂行能力を持たない人であっても、「施設ではなくて、事業所で働きたい」という強い希望がある。その願いに応えるひとつの方策としての「グループ就労」について、その利点と課題について明らかにする。

 第3は、事業主支援を含めた地域における雇用(生活)支援ネットワーク構築の可能性を明らかにすることである。職場適応援助者(ジョブコーチ)による人的支援は精神障害の人と事業主に対する直接的な支援であるが、それが有効に機能するには、福祉・医療等関係機関と連携しながら就職や職場定着を図ること、障害者の職業生活に関わる社会環境、地域支援ネットワークが不可欠であろう。本研究は、そうした、職場適応援助者(ジョブコーチ)による人的支援と地域支援ネットワークを進める体制づくりについても言及する。

(結果の概要)

 本書は、以下の5章で構成した。
第1章
 精神障害者の対策と実態を踏まえながら、本報告書の目的と方法を述べた。
第2章
 精神障害の人への事業所での雇用管理のポイントをまとめた。主要な4種類の文献について、一般(障害のない)の人に対する雇用管理の各分野ごとに、その記述内容を整理して、精神障害の人の雇用管理面の特徴をまとめた。
第3章
 障害者職業総合センター職業センターでの「短時間就労・ペア就労」に約6カ月間従事した4事例について、その効果分析を行い、短時間就労については、週20 時間未満の就労形態は精神障害のある人が働き続ける上で適したものであること、一方、ペア就労は、精神障害という同じ障害がある人たちが同一の事業所で働くことで就業を継続しやすくなること、が各々その効果として示された。
第4章
 グループ就労を実施している7所の精神障害者施設での訪問面接調査による、グループ就労の現状と就労支援のノウハウについて調査した。
 ヒアリングを通じて明らかになった、グループ就労の利点として、①利用者が職場適応を促す職員による人的支援を受け、仲間と支え合いながら働けたこと、②利用者が「短時間労働者」の雇用形態へ順応する職業準備性を実際の職場で通じて形成できたこと、③利用者の就業への動機付けを一層明確にできたこと、④事業所が精神障害者を雇用する契機と成り得たこと、⑤実施法人の職員が職業リハビリテーションの重要性を理解する上で有用であったこと、が指摘された。
第5章
 これらの結果についての考察と結論をまとめた。第1節で「精神障害者の雇用管理」、第2節で「グループ就労の利点と課題」、そしてこれらの結果を踏まえて、第3節では、「人的支援と地域支援ネットワークの構築」に言及した。

目 次

概要

第1章 問題の所在と目的

第1節 精神障害者の対策と実際

第2節 問題の所在

第3節 目的・方法・本書の構成

参考文献

第2章 精神障害者の雇用管理の特徴

第1節 目的と方法

第2節 雇用管理項目別の記述結果

第3節 まとめと考察

第3章 多様な働き方の実証的研究

第1節 目的と方法

第2節 対象者(事例)と事業所の概要

第3節 「短時間就労」の結果

第4節 「グループ就労」の結果

第5節 事例のまとめ

第6節 考察

第4章 グループ就労の実際と効果

第1節 目的と方法

第2節 「グループ就労」の実際

第3節 事例のまとめ

第4節 考察

第5章 考察と結論

第1節 精神障害者の雇用管理

第2節 「グループ就労」の利点と課題

第3節 人的支援と地域支援ネットワークの構築

引用文献

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