障害者職業総合センター
 
 

調査研究報告書NO.59

障害者を多数雇用する企業等への発注が障害者の雇用・就業に及ぼす影響に関する研究

執筆担当者(執筆順)

磯野 芳光 障害者職業総合センター統括研究員 第1章
吉泉 豊晴 障害者職業総合センター研究員 第2章、第3章

(目的・方法)

 障害者の雇用・就業については、IT技術を活用した在宅雇用・就業を含め従来とは異なった多様な形態が生じている。こうした中で、障害者の能力や特性に応じた雇用の安定及び促進を図っていく上では、多様な形態に即した仕事の発注を促進することも有効であると考えられる。本研究は、障害者を多数雇用する企業等への発注の促進が障害者の就業機会の拡大に果たす役割の実態を明らかにすることを目的として実施したものである。
 本研究では、アンケート調査、訪問調査及び専門家を招いてのヒアリングを通して、仕事の発注・受注が障害者の働く場の確保にどのような影響を与えるかを明らかにするため、在宅就業支援団体及び在宅就業障害者、自治体の発注施策、受注側である障害者雇用企業や授産施設・作業所、並びに発注側である企業についての各種状況を調査・分析した。
 第1章では在宅就業をめぐる動向について述べている。在宅就業等の普及は通勤等が困難な障害者がその能力や特性に応じて働くための機会の増大につながるものと期待されており、必要な支援、環境づくりが求められている。このため、障害者の在宅就業の実態を明らかにするため、支援団体、在宅就業者、発注企業を対象とする調査を実施しその結果を集計分析した。また、本調査の結果は、「障害者の在宅就業に関する研究会」(座長 諏訪 康雄 法政大学教授)での検討に資するため、その結果を提供した。
 第2章では、公共機関による障害者就労支援のための発注施策の状況について述べている。公共機関からの発注を障害者多数雇用企業や小規模作業所等が受注できれば、結果として障害者の働く場の確保につながる。本章では、障害者を多数雇用する企業等に配慮した発注施策を行っている9自治体について、訪問調査等によりその実態を調べその結果をとりまとめた。
 第3章では、業務の発注・受注と障害者就労をめぐる状況について述べている。本章では、業務の発注・受注と障害者就労をめぐる状況について実態を把握するため、受注側及び発注側を対象とするアンケート調査や訪問調査、専門家ヒアリング等を実施しその結果を取りまとめた。

(結果の概要)

本報告書は、平成14年度から15年度にかけて行った「障害者を多数雇用する企業等への発注が障害者の雇用・就業に及ぼす影響に関する研究」の報告書である。

第1章 在宅就業をめぐる動向
 近年のパソコンの高機能化、低価格化及び情報通信環境の高速化、相対的な低価格化を反映して、事業所外で行う在宅勤務、在宅就業が普及してきている。通勤等移動に制約を抱える障害者等にとって、在宅勤務、在宅就業は就労の機会を創り出すものとして期待されている。この研究においては、発注する企業等、仲介する支援団体、在宅就業者の3者を対象とする調査を実施した。
 第1節では、在宅就業等に関する先行研究を取りまとめた。
 第2節は、在宅就業支援団体(調査I) 、在宅障害者(調査II)、 発注する企業等(調査III)を対象とする調査の概要である。第一段階として在宅就業背印団体を対象とする調査Iを実施し、その支援団体に登録している在宅就業者及び支援団体に仕事を発注している企業等を対象に調査II、調査IIIを実施した。
 第3節は、在宅就業支援団体(調査I)の調査の概要である。支援団体の事業としては、主として仕事の仲介、技能講習・訓練、パソコン等のトラブル解決の3つを掲げるところが多かった。支援団体に登録している障害者は、肢体不自由が半分となっている。仕事の分配に当たっての問題点としては、受注量の確保の困難さをあげる支援団体が最も多い。
 第4節は、在宅障害者(調査II)を対象とする調査の結果である。身体障害が9割以上で、そのうち重度(1級及び2級)の者が8割以上を占めていた。現在の主たる就業場所としては自宅と回答した者が6割近くであった。仕事の内容としては、データ入力、文書入力、ホームページ作成などをあげる者が多かったが、仕事の収入は年間50万円未満の者が最も多く、仕事が少ない、仕事の単価が低いといったことを問題点としてあげる者が多かった。
 第5節は、発注する企業等(調査III)を対象とする調査の結果である。障害者が仕事をする機会の増加に寄与することを発注の動機とし、今後とも発注を増やす見込みのところが多かったのが特徴であった。また、品質や納期、価格に対する評価はいずれも満足していると回答したところが太宗を占めており、仕事の質を維持、確保できれば、事業主側において、障害者に対する就業機会の提供という観点から意識的に仕事を発注してもらえる可能性が少なくないことを伺わせた。
 第6節では、厚生労働省に設置された「障害者の在宅就業に関する研究会」が本調査結果等からとりまとめた「障害者の在宅就業支援策の方向性」が紹介されている。同報告によれば、障害者の在宅就業支援策の方向性として、(1)障害者の在宅就業への発注に対する奨励、(2)官公需の優先発注、(3)セーフティーネットとしての支援団体の整備、(4)在宅勤務の環境整備、(5)在宅就労コーディネーターの育成をあげている。
第2章 公共機関による障害者就労支援のための発注施策の状況
 公共機関からの発注を障害者多数雇用企業や小規模作業所等が受注できれば、結果として障害者の働く場の確保につながる。第2章では、障害者就労の観点から9自治体の発注施策について取りまとめた。
 障害者就労に配慮した発注施策の要件は、自治体によって細かなところで相違はみられるものの、概ね障害者の雇用の促進等に関する法律を参照しながら設定されている。例えば、要件たる障害者の雇用率には、法定雇用率と同じ1.8%、その2倍に当たる3.6%、障害者雇用納付金制度における報奨金の支給要件と同水準である4%の3パターンがみられたが、いずれも法制度を参考に設定されたものである。発注の際の配慮の方式としては、大きく分類すると(1)企業の格付の際に障害者雇用企業に評価点を加算する方式、(2)入札時や随意契約の時に障害者企業の指名回数を増やす方式の2種類がある。
 発注の実績については、行政として守らなければならない公平性・経済性・透明性を前提としながら、予算節減という条件の中で、多い自治体で年間1億4,593万円、1億1049万円などの発注額があり、また、延べ発注件数では多いところで年間905件、594件などとなっており、取組みの成果が窺える。
 なお、そうした発注施策に、障害者雇用を促す波及効果を見いだすことは今のところ難しい。今後、施策の実績が引き続き伸びるよう図ること、併せて、その実績を広報していくことなどにより、施策の効果を高めていく必要があろう。
第3章 業務の発注・受注と障害者就労をめぐる状況
 障害者就労の観点から発注・受注の実態を把握するため、アンケート調査、訪問調査、専門家ヒアリングを行った。これら各調査の結果からは、公共部門と関係の深い企業等では受注額にやや伸び悩みの傾向がみられるのに対し、より民間部門と関係が密接な企業等では受注額が横這いかやや伸びる傾向にあり、かつ、受注規模も大きい様子が窺える。公共部門との発注・受注関係も重要ではあるが、総体としては民間部門との関係がより大きく影響する。
 事業所間の発注・受注関係についてみると、コスト削減を意識せざるを得ない厳しい経済情勢の下で、受注側の障害者雇用企業や作業所等及びそれらと関係の深い発注側の親会社等は、従来からの関係維持に努めている様子が窺える。その背景には特例子会社制度等の影響がある。そうした制度が厳しい経済情勢の影響をある程度緩和する役割を担っていると推測される。とはいえ、今後の見通しについて不透明感が強いことも事実であり、今後への不安の声や公共機関の発注の在り方に対する要望等が出てくる背景となっている。
 発注を雇用施策に盛り込むことへの意見・要望についてみると、障害者の働く場の確保に間接的ながら貢献する発注を施策に取り込むことについては賛成の意見が多いものの、結果として雇用にマイナスの効果を及ぼさないよう一定の条件を設けるなど慎重に行うのが良いとする意見が多かった。また、企業や施設に所属するものが他の企業に出向いて仕事をする派遣方式あるいは施設外授産への取組むを施策の中に位置づければ安定した就労につながるとする意見があった。そのほか、発注の在り方について、コストだけでなく質の維持・向上にも着目したものにして欲しいとの意見が少なからずみられた。

目 次

概要

はじめに

第1章 在宅就業をめぐる動向

第1節 在宅就業等に関する先行研究

第2節 在宅就業に関するアンケート調査
  1 調査の概要
  2 調査要綱
  (1)調査の目的
  (2)調査の構成
  (3)調査対象
  (4)調査期間
  (5)調査方法
  (6)有効回答件数
  (7)集計
  (8)主な調査項目

第3節 在宅就業支援団体についての調査(調査Ⅰ)の結果
  1 支援団体のあらまし
  2 事業の内容
  3 事業運営体制
  4 支援対象障害者のあらまし
  5 支援対象障害者の状況の把握等
  6 事業実績
  7 広報・営業
  8 問題点等
  9 障害者の在宅就業に関する意見(問8、自由記述)

第4節 在宅就業者についての調査(調査Ⅱ)の結果
  1 在宅就業障害者の属性について
  2 請負の仕事全般について
  3 アンケート配布団体について
  4 就業全般について
  5 収入
  6 在宅就業を行うに当たって日ごろ感じていること、意見(問17、自由記述)

第5節 在宅就業支援団体に発注する企業等についての調査(調査Ⅲ)の結果
  1 障害者在宅就業仲介(支援)団体に対して仕事を発注している発注団体について
  2 当アンケートを配布してきた障害者在宅就業仲介(支援)団体について   3 障害者在宅就業支援団体全般について
  4 障害者在宅就業仲介(支援)団体以外の業者等への仕事の発注
  5 その他
  6 意見・要望等

第6節 調査結果にみる現状とその考察
  1 調査結果にみる障害者の在宅就業者の現状
  2 支援団体に対する評価
  3 調査結果の考察

第2章 公共機関による障害者就労支援のための発注施策の状況

第1節 発注施策をめぐる動向
  1 自治体の発注契約にまつわる基本的事項
  2 配慮型発注施策にまつわる全体的な動き

第2節 自治体の配慮型発注施策をめぐる状況
  1 配慮型発注施策の要綱等にまつわる状況
  2 配慮型発注施策の実施結果に関する状況

第3節 公共機関の関連する他の施策
  1 岐阜県における授産活性化対策モデル事業
  2 他の関連の取組み

第4節 発注施策をめぐる現状とその考察
  1 発注施策をめぐる現状と課題
  2 発注施策の効果

第3章 業務の発注・受注と障害者就労をめぐる状況

第1節 業務の発注・受注と障害者の就労に関するアンケート調査の結果から
  1 障害者多数雇用企業や授産施設等を対象とする調査(受注側対象の調査)
  (1)調査の概要
  (2)調査結果
  2 業務発注する企業を対象とする調査
  (1)調査の概要
  (2)調査対象事業所の属性に関する調査結果
  (3)業務の発注状況等に関する調査結果

第2節 障害者就労に関する団体や事業所の事例調査から
  1 障害者就労支援団体の業務の発注・受注にまつわる取組みと実態
  (1)事例A:障害者就労支援センターの取組み
  (2)事例B:精神障害者支援団体
  (3)事例C:在宅就労に焦点を当てる障害者支援団体
  2 各種事業所の業務の受注・発注にまつわる取組みと実態
  (1)訪問調査対象事業所の概要
  (2)訪問調査対象事業所の実態
  (3)訪問調査対象事業所の受注にまつわる実情と課題

第3節 業務の発注・受注と障害者就労をめぐる動向とその考察
  1 発注・受注をめぐる状況
  (1)発注・受注の増減にまつわる状況
  (2)発注・受注の安定性、契約機会、契約額の妥当性
  (3)他の企業や団体との協力関係の必要性
  (4)発注・受注の業務内容
  (5)発注先の種類、発注の動機等にみる発注側と受注側の関係
  (6)受注による障害者の就労の可能性
  2 障害者就労の観点からの発注・受注と施策に関する意見
  (1)アンケート調査結果にみる障害者雇用施策等への意見
  (2)訪問調査等にみる障害者雇用施策等への意見

参考資料

参考資料1-1 障害者の就業支援に関するアンケート(調査Ⅰ)
参考資料1-2 障害者の就業支援に関するアンケート(個人用)(調査Ⅱ)
参考資料1-3 障害者の就業支援団体への発注等に関するアンケート(調査Ⅲ)
参考資料2-1 自治体における配慮型発注施策の取組状況
参考資料3-1 障害者の就業と業務受注に関するアンケート調査票
参考資料3-2 業務発注と障害者の就業に関するアンケート調査票

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第1章 (PDF 922KB)
第1章 第4節 (PDF 1,121KB)
第2章 (PDF 399KB)
第3章 (PDF 1,282KB)
参考資料 (PDF 1,147KB)
参考資料1-3 (PDF 833KB)


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