障害者職業総合センター
 
 

調査研究報告書NO.61

サービス産業を中心とした未開拓職域における就労支援に関する研究

執筆担当者(執筆順)

石川球子 障害者職業総合センター 主任研究員
内藤洋介 産能大学 教授
岡上和雄 元 財 全国精神障害者家族会連合会保健福祉研究所 所長
吉泉豊晴 障害者職業総合センター 研究員
藤田保 琵琶湖病院 医学士

(目的・方法)

 経済構造の変化などの影響により従来障害者の主たる就業先であった製造業での就労が減少し、困難と考えられていたサービス業などの未開拓職域での就労事例が見られ始めている中で、本研究では、「未開拓職域の現状と今後成長が考えられる職域の把握」、「当該職域における就労の可能性と課題」、業種/障害別の就労実態及び就労支援に関する仔細に関する調査結果を基に、「さらなる雇用創出のため必要な就労支援の考察」を知的障害者及び精神障害者に関して行うことを目的とした。
 なお、本研究では、欠格条項の影響により職域が限られていた聴覚障害者に関しても成長が見込まれる医療職に焦点を絞り、必要となる就労支援について併せてまとめることも目的とした。
 本研究は、これら3つの目的について以下の方法で研究を実施した。
 「未開拓職域の現状」及び「成長が考えられる職域の把握」については、文献調査を実施した。
 「未開拓職域における障害者雇用の可能性と課題」については、企業及び福祉施設職員を対象とした意識調査及び企業サイドの障害者雇用に対する意識の変化等に関する先行研究、知的障害養護学校卒業生を対象とした就職先の「新職域に関する調査」、精神障害者の事例調査及び学習会の討議内容により検討した。
 「さらなる雇用創出のために必要となる就労支援」については障害別に以下の方法でまとめることとした。知的障害者については、「未開拓職域における障害者雇用の可能性と課題」検討のために行った「新職域に関する調査」と同一の卒業生のその後を調査した「卒業生の新職域での就労状況に関する追跡調査」により、未開拓職域での就労継続状況や事業所の配慮事項等の支援方法に関する結果をもとに必要となる就労支援についてまとめた。
 精神障害者については、「製造業以外の職域における就労に関する調査」により、未開拓職域における就労継続状況や事業所の配慮事項等の具体的支援方法に関する結果をもとに必要となる就労支援をまとめた。
 聴覚障害者については、聴覚障害を持つ医療従事者の会に登録されている方々の現状をもとに、医療職に従事している障害者の勤務状況と支援方法についてまとめることとした。

(結果の概要)

(1)「未開拓職域の現状」及び「成長が考えられる職域の把握」
 先行文献調査から産業構造の変化、とりわけ、経済のサービス化の影響などにより「家庭支援サービス」、「医療福祉サービス」、「余暇サービス業」に関わるサービスに今後伸びが見られると考えられ、これらの分野では障害者の就労もみられ始めており、可能性が期待される分野である。また、新規産業創出が見込まれる15分野についても可能性が考えられる分野である。
 また、地域別にサービス産業の動向を見た調査からは、地域の特色を考え併せた可能性の検討が必要である。
(2)「未開拓職域における障害者雇用の可能性と課題の検討」
 企業サイドの意識に関する課題として障害者雇用をどのような企業内の戦略・組織として定着させるのか、重度障害者の仕事の領域、配慮の方法に対する不安といったことに対する政府と企業との中間組織の必要性が課題として指摘された。
 知的障害者を対象に行った「新職域に関する調査」及び「通勤寮生を対象とした調査」の双方の結果から、養護学校の卒業生そして卒業後地域で就労している障害者が、介護及び介護以外の多様な業種で就職し、就労を継続している事例の分析から未開拓職域における就労の可能性が示された。
 精神障害者については、85件の当該職域での就労事例調査結果から、就労を継続することで早退欠勤の減少がみられたこと、動きが生き生きすることなどが確認された。また、有効な支援方法としてジョブ・コーチの活用、慣れ、仲間同士の力が主要な柱であった。これらのことから、当該職域においても支援があれば、就労が可能であること、そして就労の良い影響が示された。課題として、働く時間の調整、再発への対応、再挑戦のための方策の必要性について併せて検討した。
 また、学習会で出された意見をもとにした支援者及び当事者の観点からみた課題としては求職活動の方法、障害開示に関する考え方、障害の理解のための啓蒙の必要性、法定雇用率へのカウント、多様な雇用形態について検討した。
(3)「さらなる雇用創出のために必要となる就労支援」
 具体的支援方法等の仔細検討のための「卒業生の新職域での就労状況に関する追跡調査」によって、知的障害者が介護及び介護以外の多様な業種に就労する1000件を超える事例が収集された。従来難しいとされていた未開拓職域において、介護及び介護以外の分野で中度・軽度の障害者については、およそ8割の人が、重度の障害者についても介護で6割、介護以外で約7割の人が就労を継続していた。卒業後地域で暮らす通勤寮生81名についても、14の業種において就労の継続が示された。
 知的障害者への支援・配慮事項として、「援助者となる特定の同僚が選ばれている」、「本人のやりやすい仕事を組み合わせている」、「仕事のスケージュールの支援」、「職務を段階的に増やす」、「職務の変更を避ける」、「個人のペースに合わせた仕事量の設定」がとりわけ重要であること、また健常者との交流の程度も重要であることが示された。
 また、定着までの支援方法については、何らかの点で健常者向けの支援と異なった工夫がなされていたケースが7割近くであった。これらの他に事業所の状況、賃金、就労形態、連携機関等について結果をまとめた。
 精神障害者については、「製造業以外の職域における就労に関する調査」で得られた202件の事例について分析した。25種の業種で、就労していることが確認され、多様な業種での可能性が示された。また、対人業務が多い仕事が50件であった。なお、事業所規模は56名未満の小規模な事業所が8割近くであった。
 勤務時間については短時間勤務が多くみられた。適応状況が良好とされる事例については、配慮を行っているとの事例が30件を超えており、「集中の妨げとなる騒音等の防止」以外は、配慮を行っているとの回答があり、多様な配慮がなされていることが示され、配慮の実施による支援が重要であることが示された。
 また、定着までの支援方法については、何らかの点で健常者向けの支援と異なった工夫がなされていたケースが6割弱であった。これらの他に、事業所の状況、賃金、就労形態、連携機関等の回答結果をまとめた。
 聴覚障害者については、医療分野で実際に就労されている現状から、当該職域での聴覚障害者の就労は十分可能であることが示された。また、各種の必要な補助手段が重要な役割を果たすこと及び従来は聴覚障害が欠格条項に該当する可能性があったため医療現場において聴覚障害を補う手段や配慮等は考えられていない状況にあることが指摘された。

目次

概要
序章 研究課題と方法
第1章 未開拓職域での障害者の就労

第1節 産業別にみた障害者の就労状況
1 障害者雇用の実態
2 未開拓職域の現状
3 産業構造の変化と障害者

第2節 除外率及び欠格条項と未開拓職域
1 除外率の軽減
2 欠格条項の見直し

第2章 未開拓職域での就労の可能性と課題

第1節 意識調査にみる障害者雇用の可能性
1 「企業及び福祉施設の意識」についての調査
2 企業の障害者雇用に関する意識調査
3 意識調査のまとめ

第2節 養護学校卒業生の新職域に関する調査
1 目的
2 方法
3 結果
4 考察

第3節 精神障害者の就労の可能性と課題
1 精神障害者の就労事例にみる継続支援の課題
2 精神障害者の支援者及び当事者の観点からみた雇用・就労の課題

第3章 就労継続状況調査の実施と必要となる支援の考察

第1節 知的障害者の「新職域での就労状況に関する追跡調査」
1 目的と方法
2 結果
3 考察

第2節 通勤寮生の就労状況に関する調査
1 目的と方法
2 結果
3 考察

第3節 雇用創出のために必要な支援
1 職場開拓と配慮に関連した支援
2 自閉症及び学習障害を併せ持つ重複障害者に対する支援
3 職業評価と実習の重要性

第4節 「製造業以外の職域での就労状況に関する調査」の実施
1 目的と方法
2 結果
3 考察
(1)業種別にみた事業主に対する支援
(2)職場適応及び職場開拓と配慮
(3)症状の管理
(4)グループ就労

第4章 聴覚障害者に対する医療職への就労支援

第1節 聴覚障害者の医療職への就労の可能性と必要となる支援
1 聴覚障害を持つ医療従事者の現状
2 補助的手段と支援態勢の可能性と課題

第2節 医療職に従事する聴覚障害者の勤務状況と支援の実際
1 聴覚障害者の補聴手段について
2 医療職に従事する聴覚障害者の状況と問題点
3 聴覚障害者の医療職におけるバリアフリーのための必要な配慮と支援態勢

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序章 (PDF 750KB)
第1章 (PDF 587B)
第2章 (PDF 1,306KB)
第3章 (PDF 1,008KB)
資料1 (PDF 1,123KB)
資料2 (PDF 1,065KB)
第4章 (PDF 75KB)


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