障害者職業総合センター
 
 
−社会で取り組む職場へのバリア軽減−

資料シリーズNO.57

障害者の通勤と就業環境に関する研究

執筆者

岩佐 美樹 障害者職業総合センター 研究員

キーワード

 自助・公助・共助 ワーク・ライフ・バランス ダイバーシティ・マネージメント

活用のポイント

 障害のみならず、個人や集団の中に存在する多様性を受け入れ、最大限能力発揮できる環境づくり、ダイバーシティ・マネージメントは、ディーセント・ワーク、ワーク・ライフ・バランスの実現を推進するとともに職場にとっても大きな利益をもたらす。本研究では、障害者の通勤問題を中心に、働く人々の様々な問題の軽減や解消に取り組む数多くの事例を整理した。これらの知見があまねく多くの人々の就業環境の向上の一助となることを願う。

研究の目的と方法

 障害者が就業を目指すにあたって、通勤はしばしば大きな壁となる。彼らの抱える困難の具体的な内容を明らかにし、それらを解決、改善するための資料を提供すること、それが本研究の最大の目的である。
 研究方法については、事例〜障害当事者、障害者を雇用する事業所、そして、障害者の通勤支援等を行う人々〜に対するインタビュー調査を中心とし、インタビュー調査をとおして見えてくる社会の問題及びその改善・解決のキーワード等に関連する各種統計データ、研究結果等についても併せて調査を行った。

研究の結果得られた知見

 障害、あるいは病気やけが、育児や介護といったライフイベントにより、これまでと同様の通勤、働き方が難しくなり、就業の継続に支障が生じる人々は少なくない。そして、これらの支障に起因する課題については、共通する事柄も多い。しかしながら、問題ごとに個別には打開されている事例はあるものの、有機的に連動して、問題全体の解決・改善を図るような取り組みには至っていないのが現状である。
 本研究においては、事例〜障害当事者、障害者を雇用する事業所、そして、障害者の通勤支援等を行う人々〜に対するインタビュー調査結果をもとに、障害者の通勤と就業環境に関する問題に対する具体的方策について、働く障害当事者の努力及びその家族の協力、障害者を雇用する事業所による工夫等を「自助」、社会環境整備等による通勤支援及び公的機関等による就労支援等を「公助」、職場あるいは地域の人々による支援等を「共助」とし、一定の整理を行い、その過程で、本問題に対する具体的方策等について、数多くの知見を得るとともに、ともに支え、助け合う「共助」の精神があって、はじめて「自助」「公助」は機能することを再確認した。
 また、移動・通勤、就労等に関する様々な統計・研究等についても、インタビュー調査結果と関連付けながら報告する中で、障害者の問題が、多くの社会の問題とつながっていて、障害者の問題を解決することがあまねく多くの人々の問題を解決する、あるいはその逆となる場合が多々あることについても指摘している。
 多くの人々の就業環境に関する問題解決・改善に取り組んでいくための具体的方策等についての知見、そして、障害者の通勤と就業環境の問題のみならず、ある問題について、その人たちだけ、あるグループだけの問題として考えるのではなく、社会全体の問題として捉え、同様の問題を抱える人々に対する取り組みも視野に入れつつ、それらを有機的な繋がりを持たせて、活用できる制度を構築していくことの必要性・有用性について、通勤の問題に関する事例をとおして示唆を得ることができたことも、本研究の成果といえる。

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資料シリーズはこちらから(PDF 4,645KB)


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