障害者職業総合センター
 
 
−見えにくい障害を有する従業員の疲労軽減のために−

資料シリーズNO.85

精神障害等の見えにくい障害を有する従業員の疲労軽減のための方策

執筆者(執筆順)

石川 球子 障害者職業総合センター 特別研究員

キーワード

 精神障害 発達障害 統合失調症 うつ病 不安障害 摂食障害 リカバリー 合理的配慮 食事療法 疲労 家族支援 就労支援 就業・生活支援 就労継続支援 事業主支援 未治療期間 教育入院

活用のポイント

 本研究では、精神障害や発達障害を有する従業員の有する障害の見えにくさ(周囲からわかりづらいこと)に起因する疲労の軽減策について、配慮実践事例調査及び家族調査等の結果を踏まえ、合理的配慮の提供と障害を有する従業員のリカバリーを支援する視点から、就労支援機関関係者の事業主支援(とりわけ新たに障害者を雇用する事業主)、従業員支援、家族支援のための方策をまとめた。
 さらに、「リカバリーのための就労支援 −就労支援者用マニュアル−」を併せて作成し、予防的視点から捉えた疲労軽減のための方策と職業生活にとって重要となる食事バランス等に関する疾患別情報をまとめたので、併せて活用していただきたい。

研究の目的と方法

目的

 精神障害や、発達障害と二次障害の併存など、本人や周囲が状況を把握しにくい障害を有する従業員については、その障害の特性に起因した職場における不安感や身体的症状などによる「疲労」が職務遂行の妨げとならないための予防策や職場適応上の支援方法に関する情報の提供や具体的支援の推進について、職業リハビリテーション分野の支援者に対して、とりわけ新たに障害者を雇用する事業主などからの要望の高まりがみられる。
 そこで、見えにくい障害を有する従業員の障害特性に起因する「疲労」による職務遂行上の課題とこうした「疲労」を軽減する方策を分析し、支援機関関係者による事業主支援の推進に資することを目的とした。

方法

  1. @ 文献調査(国内外の文献の収集及び分析)と専門家からの聞き取り調査
  2. A 精神障害・発達障害を有する従業員の疲労軽減等に関する実践事例調査」
  3. B「こころの病に伴う疲労軽減に関する就労支援ニーズ調査」

研究の結果得られた知見

 精神障害を有する場合に、適切な治療や就労を含む必要な支援を病発から5年以内の早期精神病の段階で受けた場合、その予後が良いことから未治療期間を短縮することが重要である。しかし、その症状や影響が、本人や家族など周囲の者にもわかりにくいことによる未治療期間の長期化もみられる。このような場合、病気の慢性化を招き、症状や経済的困難等による疲労が就労にも影響を及ぼす。こうした傾向が就労に影響を及ぼしやすい統合失調症については、「教育―対処―相談モデル」による心理教育の効果が示されている(第1章)。さらに、海外において先行している未治療期間を短縮するための労働機関を含む機関間の連携による早期支援の取組が、日本においても推進され始め効果を上げている(第1章)。
 「精神障害・発達障害を有する従業員の疲労軽減等に関する実践事例調査」では、合理的配慮の参考ともなるおよそ60事例を紹介している(第2章)が、これらの事例の分析結果(第2章)から、早期精神病とそうでない事例の双方において、疲労の原因として「自己評価の低下」が最多であった。こうした状況は本人のみなならず、周囲の理解不足による場合もあり、双方に対する支援が必要となることが示された。また、機関間の連携による成功事例も示された。さらに全事例についての疲労の原因となることがらと配慮内容・事業主と従業員への支援、配慮の効果から、配慮が単に障害を有する従業員のみでなく、社内全体においてよい結果をもたらしている事例も多くみられた。
 「こころの病に伴う疲労軽減に関する就労支援ニーズ調査」は家族を対象としたが、精神疾患の慢性化を回避するために必要となる更なる制度的整備事項、そして障害を有する従業員のリカバリーと職業生活への個別支援の必要性の根拠となること、就労・就労継続のために提供する必要性の高い情報の種類と効果的な提供方法について示された(第3章)。

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資料シリーズはこちらから(PDF 11,487KB)


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